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  ギャラリー

​《小解説版》

 こちらでは、インスタグラムにて既に投稿済の《小解説版》 を整理再編集して掲載しております。

   当初、このようなものを書き記す事については否定的でしたが、 様々なお言葉を頂き、拝見しているうちに、伝統工芸と称する作品についても、視覚的な側面だけでなく、作り手の記憶や感情を、鑑賞して頂く方々に、共有・共感して頂くことの大きさを目の当たりにし、このページを新たに設けることに致しました。

  

 制作背景を書き記すことで、作品の原風景や思いを、より深く感じ取って頂けますと幸いです。

​『しだかじ』(2014)

 木芯桐塑布紙貼『しだかじ』(2014年度作品)

~第61回日本伝統工芸展「日本工芸会新人賞」受賞

 《小解説》

​ 2014年、この作品で第61回日本伝統工芸展(以後、本展)にて「日本工芸会新人賞」を頂きました。当時、人間国宝・秋山信子先生に師事して3年目のことでした。

​ 今見ると目を覆いたくなる気持ちが強いのですが、「そう思えるのは成長の証で恥ずべきものではなく、むしろ誇りに思うべきだ」と諭され掲載する事としました。

 この作品は、沖縄の祖母の姿を制作したもので、「しだかじ」とは沖縄の方言で「涼やかな風」という意味であります。

   沖縄の伝統的織物である芭蕉布を、麻布を幾度も染め上げ再現しており​、縞模様部分については、糸を1本1本抜き取り、裏から和紙を貼り合わせて縞模様を表現しています。

 この作品から8年後の2022年、戦前の沖縄の漁師の姿を制作した『夕浜』という作品で、再度、本展にて「日本工芸会奨励賞」で入賞することが叶いました。

 そして2024年、沖縄琉球舞踊の踊り手の姿を制作した『あかばな』にて、光栄にも「高松宮記念賞」を受賞させて頂く事となったこれらの​原点は、ある意味、この作品にあるような気が致します。

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『天真』(2015)

木芯桐塑布紙貼『天真』(2015年度作品)

~第44回日本伝統工芸近畿展:入選作品

 《小解説》

​ 前年2014年、第61回日本伝統工芸展「日本工芸会新人賞」を受賞した『しだかじ』の次作にあたるのが、この作品です。

 同作品は、石川県の百徳きものをテーマとして制作を行っていきました。百徳きものとは、子供を授かった母親が、近隣の親しい人たちから、はぎれを貰い受け、着物を仕立てていき、健やかになるよう、百人の徳が守って下さりますよう、一針一針に思いが込められたもので、人とのつながりを表現したものとなります。

 師匠である人間国宝の秋山信子先生が当時、「これは良いテーマやね」と言って下さったときの表情と、その言葉が忘れられません。

 翌2016年、神宮美術館が、人・親子の繋がりを題材とした特別展 「人- 歌会始御題によせて- 」を開催する際、お声掛け頂きまして、同期間中に神宮美術館に展示される事となりました。

 師匠・秋山先生をはじめ、同じく人形の人間国宝である市橋とし子先生の作品と、若輩者の拙作が僭越ながら並べて展示された事が光栄で、非常に嬉しかった事を、よく覚えております。

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『初雪』(2022)

木芯桐塑布紙貼『初雪』(2022年度作品)

伝統工芸人形展「高島屋大阪店賞」受賞作品​(※図録なし)

 《小解説》

​ 母子がテーマの作品は、これが3作目となりますが、いつもながら改めて見ると、手を加えたくなる衝動に駆られます。

 ちなみに他2作とは、以下の通りです。

■『ぬくもり』(2012)~第59回日本伝統工芸展:初出品/初入選作

■『しんしん』(2015)~大阪工芸展:「一圭賞」受賞作品

​ 情景は底冷えのする朝、ふと外を見ると初雪。もうこういう季節が来たのかと、寝た子をそっと抱き上げる様子を捉えたものとなります。

 母の着物には、冬朝の冷たい空気の中、雪が陽の光に乱反射した時に見える独特な爽やかさを表現出来ればと、四角い和紙を全面に貼り合わせ、ほんのり雪を連想させるような、少し鮮やかな色合いを敢えて用いてみました。

 また、母の母性を感じて貰えるよう、少々デフォルメを施し、ややふっくらとさせております。

 

​ 懐かしい香りの中にも、決して色褪せない母の温もり。母と幼子のやさしい情景が、作品を通して伝われば幸いです。

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『瞳をとじて』(2020)

木芯桐塑紙貼『瞳をとじて』(2020年度作品)

~第67回日本伝統工芸展:入選作品

 《小解説》

 前年2019年、長らく一緒に過ごしていた愛猫の闘病生活、それと自身の体調不良も相重なり、制作がままならない酷い状態に陥ってしまいます。

 

 翌2020年、状況に変化ありませんでしたが、その事自体にもやや慣れてきていたため、止まっていた制作活動を少しずつ再開し始めます。

 

 この時期制作された作品には、猫に関連したものが3作あり、後に親しい友人から「ねこ3部作」と呼ばれるようになります。

 

 その3作とは、この作品『瞳をとじて』と『記憶』、そして『瞬き』になります。

 

 ただ、その当時はそんな余裕は微塵もなく酷い状態だっため、無意識にそれらに救いを求めるかのような作風になっていたのかもしれないと、今になって少しずつそう思えるようになってきたところです

 

 この作品の難解であったところは、猫と少女との造形美、些か難しいカタチではあるものの、やさしさに包まれた様子を如何にナチュラルに収めるかで、幾度もカタチを取り直し、試行錯誤した点でした。

 全体的なトーンも極力抑え、余計なものを削ぎ落とすことを特に意識し、2020年は何とか日本伝統工芸展納期前完成に漕ぎ着けることが出来ました。

 

 風そよぐ中、猫を高く抱き上げ、少女が空を仰ぐ姿は、あの頃、ほんの僅かな希望の光に見えていました。

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